ゆとり社会人の読書ノート&エクセルVBA

素人が公法を中心に幅広く読書をします&エクセルVBA奮闘記です。

藤田宙靖『行政組織法(第2版)』(有斐閣、2022年)

大御所のによる行政組織法の体系書の改訂です。

名前を知らない人はいないと思いますが、藤田教授は行政組織法の体系書を2005年に出版しており、本書はその待望の改訂版になります*1

私は行政組織法の本を読んだのは初めてですが、本書はいい意味で初心者にはオススメできない、本物の体系書になっています。

本書の特色は、①行政法総論へのリファレンスが充実していること、②行政組織法の細かい規定に関する記述より、理解の大枠をめぐる議論が充実していること、が挙げられます。

まず①についてですが、本書を読む上で、青林書院から出版されている藤田行政法総論は必須文献になっています。行政法総論に関する基本的な説明は行政法総論に投げられており、その特徴的な行政法理解を前提としなければ、②の性格もあり理解は困難かと思います。主に塩野説に対する長大な脚注は、総論での論争の局地戦の様相を呈しています。

次に②については、組織法の教科書ですが、公物法の記述はありません。塩野行政法Ⅲが公物法を含んで476頁、宇賀行政法Ⅲが行政組織法・公物法で658頁、地方自治法概説で522頁あることに鑑みると、組織法の分野の制度的側面を概説するのは本書の役割ではないでしょう。そして総論同様、塩野説に代表される通説的見解に対して批判的な記述が主に脚注にて展開されています。

行政組織法のスタンダードな理解のためには類書を参照したほうがいいでしょうが、本書によって通説が相対化されて理解が深まることは間違いないと思います。

塩野or宇賀を通読してから再度戻ってきたい1冊でした。

*1:その前身は良書普及会から出版されていた『行政組織法』です。