ドイツ憲法の入門書を読みました。
ドイツ憲法はこの20年で急速に日本でも参照される機会が増えており、三段階審査や基本権保護義務等の用語は学生レベルでも基本事項になっているのではないでしょうか。本書は、ドイツ憲法判例の紹介をしながらその特色を概観できる稀有な書籍となっています。
ドイツ憲法判例は、憲法裁に憲法学者も多く含まれていることから理論レベルは学説と比べても遜色ないほどとされており、判例の紹介がドイツ憲法自体の説明になってしまっています。
特に、序論「ドイツ憲法判例の検討とその前提」は基本権総論の概説となっており、とても参考になります。三段階審査や基本権保護義務論が、特定の論点にのみ妥当する考え方ではなく、基本権全体を通貫する基本思想であることが分かります。ドイツ流の基本法解釈といえば小山剛『「憲法上の権利」の作法(第3版)』(尚学社、2016年)が有名ですが、同書を読む時間がない人・同書を理解できていない人には、一読をオススメします。
また、第8章「放送の自由」を西土教授、第9章「学問の自由」を栗島准教授、第15章「社会国家原理」を石塚准教授、と専門に近い分野を担当していることもあり参照価値も高まっています。