ゆとり社会人の読書ノート&エクセルVBA

素人が公法を中心に幅広く読書をします&エクセルVBA奮闘記です。

樋口陽一『国法学-人権原論〔補訂版〕』(2007年、有斐閣)

樋口憲法学、人権総論にあたる1冊です。

本書は有斐閣法律学体系シリーズの1冊として刊行された、憲法学とは別の学問として存在する国法学の体系書です。

国法学(国家学)は、ドイツにおいて発展を遂げた学問分野で、国家そのものを法学的に認識・分析する学問です。現在では比較憲法に置き換わっているケースも多々見られますが、各国憲法を題材として憲法の一般原理を抽出することを目標とする点で、比較憲法とは一線を画しています。

本書の著者は、英独仏羅と外国語に堪能で、特に仏独においては学界をリードする業績を残しています。日本学士院の会員でもあり、名実ともに日本を代表する憲法学者です。

本書でもその実力は遺憾なく発揮されており、人権総論にあたる分野について、米独仏の3か国を中心に比較検討がなされています。

ここまで縦横無尽に各国の事例を比較して国法学を語れる書き手は、今後現れないのではないかと心配してしまうレベルです。憲法もかなり細分化が進んでいますし、各国の研究も量的にフォローが難しくなっています。

なお、統治機構に当たる部分は、下記書籍参照とのこと。