ゆとり社会人の読書ノート&エクセルVBA

素人が公法を中心に幅広く読書をします&エクセルVBA奮闘記です。

藤田宙靖『新版 行政法総論(上・下)』(青林書院、2020年)

オススメ度:★★★★☆(星4つ)
内容   :★★★★★(星5つ)
読みやすさ:★★★★★(星5つ)

久々に感動する本を読みました。行政法のなぜがわかる本です。

本書は、2013年に発刊された『行政法総論』を、藤田教授が自らの傘寿を記念して、独力にて改訂したものです。上下巻合わせて前著より125頁も増加し、(著者の年齢に鑑みても、)藤田行政法の決定版として改訂された本となっています。

本書の最大の特徴は、「法律による行政の原理」、法律-行政行為-強制執行という「3段階構造モデル」を「ものさし」として、現在の行政法を描き出す姿勢にあります。

行政法は法典上の総論を持たない分野で、基本書の記述もトピック的になりがちです。しかし本書では、上述の「法律による行政の原理」、「3段階構造モデル」を軸に多様な行政の有様を統一的に記述しており、また、必要に応じてオットー・マイヤー、美濃部、田中等の学説から言及があり、行政法学説の歴史と変遷が丁寧に記述されています。今、出版されている基本書の中では、最も「なぜ」に答えてくれる本だと思います。

判例集へのリファレンスや組織法の記述がないこと、個別法の具体的引用が少ないことから、司法試験に有用ではないです。サクハシに代表される「教科書」を読んでも行政法上の概念間のつながりがうまく理解できない人には、副読本としてオススメです。

以下は投げ銭用です。

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