ゆとり社会人の読書ノート&エクセルVBA

素人が公法を中心に幅広く読書をします&エクセルVBA奮闘記です。

大垣尚司『金融と法』(有斐閣、2010年)

コーポレートファイナンス従事者必携の1冊です。

以前にも私が著書を絶賛している*1大垣教授の代表作と言っても過言ではない名著です。

本書は、①コーポレートファイナンス論、②ファイナンス法を有機的に結合させつつ、それぞれの入門書として初心者を啓蒙しながら、③金融実務の最前線を解説するという離れ業をやってのけています。

①については、簡単な記述ではあるものの、最適資本構成にかかるMM理論や、イールドカーブ等が過不足なく説明されています。

②については、会社法、信託法、保険法を概観しながら、オフバランス取引にかかるサイレント譲渡のような細かい論点にも目配せがされています。

③については、利息の計算にかかる片端・両端の説明からローンセカンダリー市場といったコーポレートファイナンスの類書にも説明がない論点まで言及があります。

これら3点を、大垣教授のわかりやすい説明で600ページにまとめてしまう力量には脱帽です。あまりにわかりやすく面白いので、1日で一気に読んでしまいました。

あえてデメリットを挙げるとすれば、絶版になっていることと、出版年が多少古くなっていることでしょうか。大垣教授・有斐閣には、民法改正対応版の改訂を伏してお願いするばかりです。ただ、大垣教授の他の本もそうですが、本書で取り上げられている内容は多少の年月では変わらない本質的な内容が多く、その感動的なわかりやすさは出版年の新しい類書に替え難いレベルです。

もし書店で見かけることがあれば迷わず買って欲しい至極の1冊です。年内最後に読めてよかったです。