ゆとり社会人の読書ノート&エクセルVBA

素人が公法を中心に幅広く読書をします&エクセルVBA奮闘記です。

大垣尚司『ストラクチャードファイナンス入門』(1997年、日本経済新聞出版)

大垣教授のデビュー作かつ不朽の名著をご紹介します。

本書は、本ブログで度々取り上げている『金融と法』『金融から学ぶ~』シリーズの著者である大垣尚司教授のデビュー作です*1

ストラクチャードファイナンスというと聞き慣れないかもしれませんが、要は「証券化」や「流動化」、「アセット・ファイナンス」を総称して仕組み物のファイナンスのことを指しています。

本書における定義では、「信用リスクのコントロール」がストラクチャードファイナンスの本質とされています。ストラクチャードファイナンスの分かりやすい現れ方が、上記で挙げている「証券化」や「流動化」と言う訳です。信用リスクのコントロールは、デリバティブによる市場リスクのコントロールと併せて、20世紀の金融業界における2大発明とされています。

本書が出版された20世紀末は日本におけるストラクチャードファイナンスの勃興期であり、当時最先端の金融技術であるストラクチャードファイナンスを概説する入門書としては最初期に出版されています。

第1・2章はではまずアメリカの事例が紹介されたのちに、第3章「証券化」、第4章「流動化」、第5章「アセット・ファイナンス」について詳述されます。

第6章以降はかなり高度な内容を含み、私もまだ理解が追い付いていません。入門書でありながら、このレベルまで解説があるのは、多少筆が滑っている感じがしなくもないですが、当時の熱狂が伝わってくる良書です。

*1:そしておそらく、『金融と法Ⅲ』は本書を土台に書かれます。