ゆとり社会人の読書ノート&エクセルVBA

素人が公法を中心に幅広く読書をします&エクセルVBA奮闘記です。

KPMG FAS・あずさ監査法人編『ROIC経営』(日経BP、2017年)

近年話題に上がることの多いROICについて分かりやすく解説した本です。

本書を読んで一番感銘を受けたのは、ROICに関する部分ではなく、CAPMによる投資家の期待リターンの説明の部分でした。

ROICについては、確かに考える必要はあるなと思いましたが、ROEROAの簡便さを上回るほどではないかなという印象です。

コーポレートファイナンスの本には、CAPMによる資本コストの計算が必ず書いてあります。

株主資本コスト=リスクフリーレート+β×リスクプレミアム

数式を説明されてわからない人はいないほどにシンプルですが、実際どうなの?という部分を説明している記述にはあまり触れてきませんでした*1

本書では、日経IR協議会が行った調査の結果を引用して*2、日本企業が認識する自社の平均株主資本コストを、

株主資本コスト(6.2%)=リスクフリーレート(0.81%)+β(0.98)×リスクプレミアム(5.93%)*3

と記載しています。

他方、日本株式に対する国内機関投資家は、中長期的な期待収益率として6~7%、海外機関投資家は7~8%程度の水準を要、しているようです*4

両者の差の大きな要因はリスクフリーレートにあるとされ、準拠国の長期金利に差があることや、人工的に操作された金利水準を保守的な水準に設定しなおす独自ルールによっておおむね2%程度の差が発生しているものと説明されています。

無味乾燥だと思っていたCAPMが実態と平仄があっていることを不意に示されたことで、コーポレートファイナンスを再び勉強する気になりました。

*1:今まで紹介してきただけでも下記の本を読んでいますが、コーポレートファイナンスはいまだに苦手分野です。 uyutomo.hatenablog.com uyutomo.hatenablog.com uyutomo.hatenablog.com

*2:本書31頁。

*3:各平均値の和は、株主資本コストには一致しない。

*4:本書35頁。