行政学のスタンダードな教科書であるとともに、とても読みやすい本になっています。
本書は、行政学の教科書として「行政学理論」と「制度記述」と「実態分析」を鼎立させており、そのバランスの良さは学術書として稀有なレベルです。本書の第一部はいわゆる行政学理論に充てられており、主にアメリカ行政学の理論が紹介されています。従来の教科書では必ず説明されていたシュタインの官房学はコラムに落とされており、相対化されています。
次に制度記述については第2部、第3部以降で展開されています。
私は以前、西尾行政学*1を読んだことがあるのですが、本書にもある通り「制度記述」に終始しており、読んでいて楽しい類の本ではありませんでした。また西尾行政学は改訂されておらず、最新の議論には対応していません。
その点本書では、橋本行政改革や民主党政権時代も織り込んだ記述となっており、制度記述としては十分なものになっています。
また、数多くのコラムで行政の実態についての補足がなされています。引用文献に櫻井よしこや菅直人の書籍が挙げられているのは、学術書の枠を超えた面白さの一端を示すものとしてとても興味深かったです。