ゆとり社会人の読書ノート&エクセルVBA

素人が公法を中心に幅広く読書をします&エクセルVBA奮闘記です。

伊藤靖史『経営者の報酬の法的規律』(有斐閣、2013年)

神保町ブックフェスティバルで購入した本3冊目です。

日本の会社法は、取締役の報酬について361条にて「株主総会の決議で定める」ことを求めています。

この規定は取締役の「お手盛り防止」の趣旨があると解釈されており、長く学界でも通説を形成していました。

ただ、アメリカやイギリスでは取締役会や報酬委員会によって取締役の報酬が決められるようになっており、お手盛り防止以外にも経営者に対するインセンティブ付与の側面も考慮すべきではないかというのが本書の主張です。

そのためには、個別取締役の報酬の開示し株主の監視の下に置くべきであって、1億円以上の報酬を受け取る取締役のみが個別開示となっている・役員報酬の総額の決定のみがなされている日本の法制は立法論的に解消されるべきと主張しています。

筆者が着目するアメリカ・イギリスでは、業績連動型の報酬が一般的となっており、固定報酬を前提としてお手盛り防止のみに着目する日本法は遅れたものとして見えているのでしょう。

米英の開示制度が詳述されており、彼の国の先進性に驚きました。日本本社のグローバル企業でも、外国籍のプロ経営者を招聘する企業も増えているので、役員報酬の増加は避けられないでしょう。本書が見据える問題は遠くない未来でアクチュアリティを持つのではないかと思いました。