憲法の論点解説書の紹介です。
本書は、憲法の中でも比較的現代的な論点について、学生向けに解説した本です。イメージとしては、もっと厳選されてもっと深く解説された『争点』といった趣です。冒頭に問題のようなものがついていますが、それには気を留めず、論文集として読むべき本です。本書の魅力は、①豪華な執筆者が、②主に得意分野について、③学生向けに解説している、という点にあります。まず、①②については、目次を見れば明らかです。
- 主権〔山元 一〕
- 国家目的と国家目標規定〔小山 剛〕
- 基本的人権の観念(1)〔人権の意味〕〔駒村圭吾〕
- 基本的人権の観念(2)〔自己決定権〕〔小泉良幸〕
- 権利の保障と制度の保障〔小山 剛〕
- 人権の国際的保障〔齊藤正彰〕
- 法人および団体の人権〔齊藤正彰〕
- 特別な法律関係における人権保障〔松本和彦〕
- 私人間における権利の保障〔松原光宏〕
- 基本的人権の「保護領域」〔松本和彦〕
- 幸福追求権の射程〔松原光宏〕
- 知る権利と自己情報コントロール権〔松本和彦〕
- 法の下の平等〔井上典之〕
- 信教の自由と政教分離〔小泉良幸〕
- 表現の自由と事前差止〔鈴木秀美〕
- マス・メディアの自由と特権〔鈴木秀美〕
- 国家助成と自由〔駒村圭吾〕
- 大学の自治〔山元 一〕
- 経済的自由の限界〔小山 剛〕
- 財産権(1)〔石川健治〕
- 財産権(2)〔石川健治〕
- 生存権〔松本和彦〕
- 実効的な権利保障〔井上典之〕
- 代表観念〔毛利 透〕
- 政党の位置づけ〔林 知更〕
- 議院内閣制の本質とその刷新〔林 知更〕
- 法律事項〔高田 篤〕
- 行政権の概念〔毛利 透〕
- 司法権の概念〔宍戸常寿〕
- 違憲審査制〔宍戸常寿〕
- 立法行為の違憲審査〔駒村圭吾〕
- 地方自治の本旨〔小山 剛〕
- 憲法の意義〔駒村圭吾〕
『基本権保障の憲法理論』の松本和彦教授、「財産権条項の射程拡大論とその位相(1)―所有・自由・福祉の法ドグマーティク」の石川健治教授、「政治過程の統合と自由 : 政党への公的資金助成に関する憲法学的考察」の林知更教授、『放送の自由』の鈴木秀美教授などなど。彼/彼女らの大部な著作を読む前に、本書の項目で入門しておけば、手軽に知識を手に入れることができますし、大部な著作を読む手がかりにもなります。
③について、本書で扱われている内容は、かなり難しいものなので、「学生向けじゃない」と思う人もいるかもしれません。しかし、テーマ自体の難しさからすれば、分かりやすく解説されたものが大半です。ぜひ辛抱強く読んでみてください。