ゆとり社会人の読書ノート&エクセルVBA

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小山剛=駒村圭吾編『論点探究憲法(第2版)』(弘文堂、2013年)

憲法の論点解説書の紹介です。

本書は、憲法の中でも比較的現代的な論点について、学生向けに解説した本です。イメージとしては、もっと厳選されてもっと深く解説された『争点』といった趣です。冒頭に問題のようなものがついていますが、それには気を留めず、論文集として読むべき本です。

本書の魅力は、①豪華な執筆者が、②主に得意分野について、③学生向けに解説している、という点にあります。まず、①②については、目次を見れば明らかです。

  1. 主権〔山元 一〕
  2. 国家目的と国家目標規定〔小山 剛〕
  3. 基本的人権の観念(1)〔人権の意味〕〔駒村圭吾
  4. 基本的人権の観念(2)〔自己決定権〕〔小泉良幸〕
  5. 権利の保障と制度の保障〔小山 剛〕
  6. 人権の国際的保障〔齊藤正彰〕
  7. 法人および団体の人権〔齊藤正彰〕
  8. 特別な法律関係における人権保障〔松本和彦〕
  9. 私人間における権利の保障〔松原光宏〕
  10. 基本的人権の「保護領域」〔松本和彦〕
  11. 幸福追求権の射程〔松原光宏〕
  12. 知る権利と自己情報コントロール権〔松本和彦〕
  13. 法の下の平等〔井上典之〕
  14. 信教の自由と政教分離〔小泉良幸〕
  15. 表現の自由と事前差止〔鈴木秀美
  16. マス・メディアの自由と特権〔鈴木秀美
  17. 国家助成と自由〔駒村圭吾
  18. 大学の自治〔山元 一〕
  19. 経済的自由の限界〔小山 剛〕
  20. 財産権(1)〔石川健治
  21. 財産権(2)〔石川健治
  22. 生存権〔松本和彦〕
  23. 実効的な権利保障〔井上典之〕
  24. 代表観念〔毛利 透〕
  25. 政党の位置づけ〔林 知更〕
  26. 議院内閣制の本質とその刷新〔林 知更〕
  27. 法律事項〔高田 篤〕
  28. 行政権の概念〔毛利 透〕
  29. 司法権の概念〔宍戸常寿〕
  30. 違憲審査制〔宍戸常寿〕
  31. 立法行為の違憲審査〔駒村圭吾
  32. 地方自治の本旨〔小山 剛〕
  33. 憲法の意義〔駒村圭吾

『基本権保障の憲法理論』の松本和彦教授、「財産権条項の射程拡大論とその位相(1)―所有・自由・福祉の法ドグマーティク」の石川健治教授、「政治過程の統合と自由 : 政党への公的資金助成に関する憲法学的考察」の林知更教授、『放送の自由』の鈴木秀美教授などなど。彼/彼女らの大部な著作を読む前に、本書の項目で入門しておけば、手軽に知識を手に入れることができますし、大部な著作を読む手がかりにもなります。

③について、本書で扱われている内容は、かなり難しいものなので、「学生向けじゃない」と思う人もいるかもしれません。しかし、テーマ自体の難しさからすれば、分かりやすく解説されたものが大半です。ぜひ辛抱強く読んでみてください。