法律の本ではなく、法「学者」の本のご紹介です。
本書は、法学者や法律書についての批評を通じて、法律学の「雰囲気」を伝える本です。私は、法律を勉強する上で、この「雰囲気」がつかめず、とても苦労しました。「何を」言うかよりも「誰が」言うかが一定の影響力を持ってしまう法律「学」においては、学界の議論の動向や、個々の研究者の背景的な知識についても理解することが求められます。経済学などの他分野の論文では、論文の最初に、問題設定や研究方法、従来の議論などの前提が書かれていることが多いですが、法律学では、そのような形式的側面はあまり重視されていません*1。そのような中、意識的に「雰囲気」を伝えようとする本書は、とても貴重なものです。
法学者として取り上げられているのは、民法学者や東北大学に所属する研究者が中心です。取り上げられている学者は以下の通りです。専門外の憲法や行政法の研究者についても批評してみせる、著者の読書量には感服です。
憲法における『憲法本41』のように、読書案内として有用です。また、加藤一郎『民法ノート(上)』の書評は、同書と同じく対話形式で書かれているなど、読み物としてもおもしろいこと間違いなしです。オススメです。
*1:もちろん、先行研究を参照していないというわけではありませんが、専門の研究者以外の読み手を想定していないので、そこは「暗黙の了解」とされていることが多いように感じます。ただ、最近の論文では、そのような形式面にも配慮されたものが増えています。