世紀末ウィーンの文化を描いた秀作です。
世紀末ウィーンといえば誰が思い浮かぶでしょうか。多文化主義に支えられた豊かな文化は、驚くほどの人材を輩出しました。
美術ではグスタフ・クリムト、音楽ではマーラーやシェーンベルク、演劇ではホフマンスタール……
また学問においても、先進的な業績が多数存在しています。
精神分析ではフロイト、自然科学ではボルツマン、マッハ、メンデル、経済学ではメンガー、シュンペーター、法学ではイェリネック……
そして忘れてはいけないのは、哲学*1のウィトゲンシュタイン。
本書は、英米分析哲学の流れから説明されてきたウィトゲンシュタインを、ウィーンを通して理解するための1冊です。
ウィトゲンシュタイン好きの人は読んで興奮すること間違いなし。そうでない人も、世紀末(世紀転換期)のウィーンに憧憬の念を抱くこと間違いなしです。
多少長いですが、つまみ食いでもいいので読んでおきたい本です。疲れたとき・心に安らぎが欲しいときに読むといいかもしれません(笑)
復刊した平凡社に感謝です。
*1:ウィーン哲学の独自性をフリッツ・マウトナーと関連付けて論ずるものとして、嶋崎隆「『オーストリア哲学』の独自性とフリッツ・マウトナーの言語批判」人文・自然研究(一橋大学)121-79頁(2012年)。