ゆとり学部生の読書ノート

公法を中心に、気になった本について書きます。

スコット・A・シェーン(谷口功一=中野剛志=柴山桂太訳)『<起業>という幻想―アメリカン・ドリームの現実』(白水社、2011年)

面白そうなタイトルの本を見つけたので、読んでみました。

〈起業〉という幻想 ─ アメリカン・ドリームの現実

〈起業〉という幻想 ─ アメリカン・ドリームの現実

アメリカといえば、シリコンバレーを中心にベンチャー企業が次々に生まれていて、好調な経済を支えているという印象が強いと思います。具体例としては、アップルやグーグル、アマゾン、フェイスブックといった企業でしょうか。翻って日本では、新産業が育っておらず、経済停滞の象徴としてバッシングされています。

本書は、そのようなアメリカについての<起業>幻想を打ち破っています。それも、統計資料を駆使して、客観性を確保しています。

本書の結論は、実にありきたりです。新たなビジネスの多くは、誰かの下で働きたくない中年男性が、日々の生活をやりくりするために行っているものだということです。つまり、起業という華々しいイメージで語られる「ベンチャー企業」はごく少数にすぎず、大多数の起業は、いわゆる自営業なのです。

結論はとても説得的ですが、それは逆説的に、起業に対して人々が持っている強いプラスのイメージを浮き彫りにします。なぜ人々は、起業幻想を持ってしまうのでしょうか。本書にその答えはありませんが、イノベーションのインセンティブ設計という問題に、これからも目を向けていきたいと思います。