ゆとり学部生の読書ノート

公法を中心に、気になった本について書きます。

駒村圭吾=山本龍彦=大林啓吾編『アメリカ憲法の群像 理論家編』(尚学社、2010年)

アメリカ憲法の群像―理論家編

アメリカ憲法の群像―理論家編

大要

若手のアメリカ憲法研究者によって書かれた、アメリカの憲法学者の入門書(?)です。合計12人が紹介されており、チャールズ・ブラック、ジョン・ハート・イリィ、サンフォード・レヴィンソン、キャス・サンスティンといった日本でも知られる著名な学者から、ジェド・ルーベンフェルドのようなこれから評価が高まっていくであろう学者まで、幅広く紹介されています*1

本書の読み方としては、①通読してアメリカ憲法学の潮流を読み取る、②個々の学者にフォーカスしながら拾い読みしていく、③、日本の憲法学がどのように受容してきたのかをつかむ、④伝記的に読む、など様々考えられます。アメリカ憲法学の入門書としての役割も担うことができるかもしれません。とにかく、幅広い「読み方」を提供してくれる面白い本です。

感想

12人紹介されている中で、特に興味を引いたのは、フレデリック・シャウアーとジェド・ルーベンフェルドでした。

シャウアーは、法実証的に言論の自由を論じているらしく、体系性を重んじながら法哲学的な考察をしているようです(本書の記述だけではうまく理解できなかったので、時間があれば原典をあたってみたいところ)。

ルーベンフェルドは、経歴からしてとてもユニークです。プリンストン大学を最優等で卒業した後、俳優を志してジュリアード音楽学院に入学し、その後、ハーヴァード・ロースクールを優等で卒業しています。現在はイェール大学教授で、小説家としても活躍しています。

殺人者は夢を見るか(上) (講談社文庫)

殺人者は夢を見るか(上) (講談社文庫)

殺人者は夢を見るか(下) (講談社文庫)

殺人者は夢を見るか(下) (講談社文庫)

研究書も翻訳されています。

プライヴァシーの権利

プライヴァシーの権利

しかも驚いたことに、トヨタのCMにも出演していたそうです。

そんな彼は、主張もとてもユニークです。彼の問題意識は、「自由という観念の中に時間を取り戻す」ことです。つまり、今を刹那的に生きる自由=スピーチ・モデルを否定し、通時的意味と目的を自らの生に付与しそれに従って生きる自由=コミットメント・モデルを提唱します。この問題意識は、彼の書く小説にも現れます。

だが、そこが厄介なのだ。現在にはけっしてもたらせないものがひとつある。意味だ。幸福と意味とではありようがちがう。幸福を見つけるには瞬間に生きるだけでいい。刹那的に生きるだけでいい。だが、意味を――おのれの夢や、秘密や、人生の意味を――求めるのならば、いかに暗かろうと過去を再訪せねばならず、いかに不確かだろうと未来のために生きなければならない*2

とにかくおもしろい人なので、積極的に論文や著作に触れていこうと思います。



ちなみに、この本の続編として、実務家編が企画されているとかされていないとか……

*1:本書で紹介されている12人は、チャールズ・ブラック(駒村圭吾)、アレクサンダー・ビッケル(大林啓吾)、ジョン・ハート・イリィ(葛西まゆこ)、ローレンス・H・トライブ(平地秀哉)、フレデリック・シャウアー(奈須祐治)、リチャード・H・ファロン(尾形健)、ブルース・アッカーマン(大江一平)、マーク・タシュネット(大河内美紀)、サンフォード・レヴィンソン(中川律)、リチャード・ポズナー(山本龍彦)、キャス・サンスティン(森脇敦史)、ジェド・ルーベンフェルド(横大道聡)です(括弧内は執筆者)。

*2:ジェド・ルーベンフェルド(鈴木恵訳)『殺人者は夢を見るか(上)』(講談社、2007年)8-9頁。